出版されるや、ビジネス系のHPなどで取り上げられて話題沸騰になっていた本を読みました。
著書はAIが東大を目指すプロジェクト、通称東ロボプロジェクトの立ち上げ人、新井紀子氏。
題名からして、子供の教育系の話かと思いきや、実はそうではないのです。
それでも、小さい子を持つ親は必読の1冊であることには変わりはありません・・・。
エール出版社より本が出版されました。
小学3年生から4年生で気をつけるべきことを詳しく取り上げています。
kindle出版しました。unlimitedでも読めます。
完全に無料で読めるコミックエッセイです。
↓こちらはアマゾンの縦読みfliptoonです。
キンドルとは違う読み心地かなと思いますので、読み比べもしてみてください。
内容は一緒です!
透明教育ママの絵日記 教育系コミックエッセイだけど役に立つ可能性ゼロ【ブログ放置編】
新作です。
kindleのジャンル別ベストセラー獲得しました!
ありがとうございます。
AIが出来ること・出来ないこと
【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち
4章構成となっています。
前半の1章と2章はAIに関する記述がメインです。
なぜそこまで割いているのか。
第一線でAIの研究、開発に携わっている人間と一般市民の間には、人工知能についての理解度が違います。
AIは何でも出来るようになるのでは!?、と考えていた私のような人間は一定数いると思います。
となると、先ずは勘違いしている人向けに説明する必要があります。
そのため、本の半分はAIの仕組みや欠点等々が論理的に書かれています。
それではなぜ、題名のような文言が登場してくるのか、気になりますよね。
多くの大学生は教科書の理解度が不十分?
第4章の冒頭では、AIがそう簡単に取って買われない職業の一覧が載っています。
オックスフォード大学研究チームの予測データーのものです。
AIが苦手とする臨機応変さと高いコミュニケーション能力+専門的知識が求められる職種ばかり。それなら人間は安泰化と思いきや、そうではないのが現実、という話の展開になります。
大学1年生の結果
全ての基盤となる読解力が崩壊しているのではないか、と著者が疑い始めたのは東ロボくんプロジェクトが開始した2011年のこと。
大学で学生と接している教員の多くが、会話が成り立たなかったり学力の低下を肌で感じ、調査に踏み切った背景がある、と記されています。
入学したての様々なレベルの国公立私立大の1年生、6,000人に、大学生数学基本調査を実施。
三次関数や微分積分という問題ではなく、いたってシンプルな問題5つ出題。
大学の教科書を読んで理解できる学生の割合を調査する目的で行われました。
蓋を開けたら、とんでもない状況になっていることが判明。
国立S、国公立A、国公立B、私立S、私立A、私立B、私立Cと偏差値順にグループ分けして正誤をグラフ化したものを見ると、国立Sだけ別格のなのが分かります。
私立Sは国公立Aより結果が悪い状況です。これに関しては本書では触れられていませんけどね。
大学生以下での実態を詳しく知るため、中高生向けの調査へと舵を切ります。
衝撃的なデーター
教科書を理解しているのだろうか。
私も仕事をしている時、ハッキリ言って疑問に思ったことはありませんでした。
あるとしたら、社会の公民で書かれている内容の理解度の差と国語の文章題。
公民はとくに、その差がハッキリしていたので、読解力が不足している子への対応は色々な先生が苦慮していたのを覚えています。
憲法や選挙権など、中学生にとっては遠い世界のように感じるものは特にそうでした。
もちろん、すぐに理解できる子もいますが、そういう子は100%他の教科も出来る子。親も子供の教育に関心があります。
社会に出て必須の知識は家庭環境で差がでると痛感しましたね。
さて、話を戻します。
中高生向けの調査をするにあたり、東ロボくんに文章などを覚えさせる研究が活かされることになりました。
中学生と高校生に実施
AIが論理的に文章を読めるように試行錯誤したものを、人間の子供たちが論理的に問題文を読めているのかどうかに役立てられたのです。
調査はパソコンやタブレットで行われました。年々データーは集まってきているようですが、当時でも2万5千人分のデーターが集まりました。
データーが多い方が信ぴょう性が高くなるのは言うまでもありません。
やる気のない被調査者はボタンを押す速さで自動的に分かり、ハネるというのですから結果の精度は高いと言えます。
上記の大リーグ選手の出身国の円グラフは、色々なメディアで取り上げられているのでご覧になった方もいることでしょう。
とんでもなく難し文章ではないし、難問でもありません。新聞や教科書に載っているような文章です。
問題文では、アメリカ以外の国出身が28%とあるので、推測してアメリカ出身の選手=72%、というに至らない子が多数いた、という衝撃的な結果となっています。
荒っぽい言い方ですが、A=B、B=C、ではAとCはどんな関係?、と聞かれてA=Cが分からない。と似た状況なのでは、と感じました。
AIに出来ない仕事をする人材が不足する
このような結果から、AIでは代替えできない仕事をし得る人材に、到達できない人間が溢れる、と考えるのが自然な流れです。
寿司職人やパティシエでも、調理師免許取得には筆記試験の合格が必須。自動車免許でも筆記試験に合格しないといけません。
新井氏は危機感を覚えてこの本を書きました。
新井氏はこの結果を受けて、調査を受けた高校の偏差値と調査結果(正答率の違い)を調べ、相関関係がみられたと書いています。
調査を受けた中学校は公立中と思われるので、様々な生徒がいるので除外したのでしょう。
高校は公立であっても入試が課されているので偏差値が存在しています。
つまり、AI以上の読解力が身に付いている高校生は、トップレベルの高校に入れる生徒くらい、が現状なのです。
新井氏はこう断言しています。
「御三家」と呼ばれるような超有名私立中古一貫校の教育方針は、教育改革をする上で何の参考にもならないという結論にたっしました。理由がわかりますか?そのような学校では、12歳の段階で、公立進学校の高校3年生程度の読解能力値がある生徒を入試でふるいにかけています。
P221より抜粋
読解力のつけかたは不明
基礎読解力と生活、読書、学習習慣の因果関係を探りましたが、これをやるから読解力が伸びる、という関連性を見つけることはまだできていないそうです。
ただ、読解力のマイナスになるのは貧困、ということは言えるという記述が目に入りました。
アメリカの研究でも、貧困層の子供は語彙力が少なく、そのことが後々の学業に支障をきたすという報告があります。
下剋上受験でも、国語の問題に四苦八苦する描写がありますが、語彙力がないと超難関私立中学に立ち向かうことも叶いません。
親子の会話があり、知的好奇心があるとで語彙力が増えていくので、まずは普段の会話力を磨いていくのが取り組みやすいのでは、と個人的に感じています。
出来ることはあるか?
第4章はAIによってホワイトカラーの仕事が分断、私的には破壊されていく話が描かれていきます。
今以上に、創造力、思考力の有無を問われる時代に突入すると感じました。
下記のリンクでは、トップIT企業がAIが弱い創造力のプロ、芸術くを雇用している記事です。
【AI時代の発想術】グーグル、フェイスブック…芸術家を社員登用するIT業界トップ企業の目算
感性や自己表現というのは人間の特性でもあるものの、今まではその強弱がダイレクトに雇用の面で差がでることはほとんどありませんでした。
デザイン会社や建築系の仕事、服飾系といった分野の話、で済まされてきましたが、今後は芸術的感性が人生を左右しかねない、と思います。
自分の狭い範囲の話ですが、国立大医学部に現役合格した同級生も小さい頃から絵を習っていました。
また、2人ほどですが、国立大最難関レベルに進学した知り合いも子供の頃に絵画を習っていたと話していました。
絵の上手い下手関係なく、絵を描くことで完成を磨くのはプラスに働くとずっと思っています。
我が家では、絵画教室に通わせるだけの資金力はないので、大量のコピー用紙と色鉛筆、カラーペンなどを常にテーブルにおいて好きなように絵を描かせてきました。
おかげで、小学生の頃の自分よりはずっと創造力があると感じています。
完全に自分を反面教師にしていますね。
AIのニュースやグーグルやアマゾン、フェイスブックの雇用の話を知ることで、将来どのような人材が求められていくヒントになるはずです。
まとめ
タイトルだけだと、教育問題オンリーの話が書いてあるのかと思いきや、いい意味で裏切られました。
今の日本の子供たちの読解力は、危機的水準に達していることが嫌というほど分かります。
親である自分もどうだろうか、と胸に手を(私の場合は頭に手を)当てて考えてしまいました。
第3章では ページ数は割いていないものの、小さいお子さんがいる親なら気になるデジタルドリルやアクティブラーニングについても述べられています。
Z会なら従来型(紙ベース)か中学受験コースがベスト、と読んでいて感じる自分がいました。チャレンジも従来型、でしょう。
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小さい子はとくに、昔ながらの紙と鉛筆の方が、安心できるのかな、と。
アクティブラーニングに関しては、10年後、君に仕事はあるのか?―――未来を生きるための「雇われる力」」の著者・藤原和博氏も似たようなことを主張していたのが興味深いです。
うまり、アクティブラーニングが成功するのは、知識がある生徒に限定されやすいのです。
背景に基礎的な知識がないまま議論を重ねると間違った方向にむかいやすい。そして誰もその間違いに気が付かない。
調査するにも、資料を読み取ることが出来なければ、無に等しいですよね。
AIの進出と進化、教育改革の荒波が交差する日本。
親として考えさせられるばかりの1冊でした。
まだ読んでない方は、ぜひ手にとって読んでください。
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