今回は【現実逃避する子を現実に引き戻すにはどうすればいいのか】と題し、お話していきます。
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小学校低学年や中学年の頃はまだ勉強をしているとはいえ、その頃はまだ勉強自体が直接自分の人生の選択
に関わるほどの重みはありません。
しかし、小学5年生や6年生になり中学受験をする子は『志望校に合格できるかどうか』『全落ちして学区の中学に行くのか』という状況に置かれます。
中学受験をしない子でも、中学校を卒業した時点で9年間に及ぶ義務教育期間が終わり、高校へ進学する場合は受験をする必要があります。
その際、合格か不合格かという二つの結果が待ち受けています。
中学受験をする子は小6で、高校受験組は中学3年生に大きな試練の時を迎えることになります。
受かるか受からないか、ということを考えながら勉強する子ども達の中には『もう嫌だ』と自暴自棄になり現実逃避に走る子もいます。
個人的な意見になりますが、より一層自我が芽生えて精神面で成長する中学生になると自分と他人との比較をして自己嫌悪に陥る子も出てくるので現実逃避する子も中学受験組に比べると多いような印象があります。
周囲の子が淡々と勉強していることが信じられず、同じようなことができない自分を恥ずかしく思いながらも『どうにでもなれ』とやけになり、ゲーム三昧、動画視聴を見たりと着々と近づく人生の分岐点から逃れるよう、他の人から見たら怠け者のような行動をしてしまいます。
多くの子がこうした行動に出るわけではありませんが、やはり一定数います。
そして、自分の子どもが大切な時期に現実逃避をするようになったら親としては悩み、不安に苛まれて『どうしたらいいのか』と苦しむようになります。
受験期というナーバスな時期だけでなく、思春期、反抗期と親子関係がちぐはぐしやすい時期でもあるので、声がけの仕方も重要になります。
良かれと思ってかけた言葉が逆効果になることも珍しくなく、親は心身ともに疲弊してしまいます。
これでは家族が一致団結して乗り越えることが理想的な子どもの受験期を、入試本番が始まる前からトラブル続出になり、受験勉強どころではなくなります。
なんとか問題を解決して、子どもの心を落ち着かせて入試当日を迎えたいものです。
そこで今回は、何とかして受験などの人生の分岐点が目前に迫っているのに真正面から受け止めず逃げ回る子どもを現実に引き戻す方法をご紹介していきます。
1.現実から逃げ出したらどうなるのか考える
まず、受験はクラスメイトも友達も受けるのを避けられないことだと諭しましょう。
そんなことは子どもの方も百も承知ですが、『自分だけ悲劇的な立場になっている』というわけではなく、高校受験する全国の中学3年生全員が平等に『中学3年生の冬に受験があります』という現実は変わりがありません。
大半の受験生は勉強を頑張っています。
それは志望校に合格することを最大の目標にして、その夢が叶うよう自分を奮い立たせて頑張っているわけです。
逃げてしまう子は合格できるか確証が持てない不確かな中で勉強することが辛くて、逃げ出してしまいます。
しかし、ずっと逃げていたらどうなるのでしょうか。
おそらく、志望校合格は難しくなるでしょう。そして第2志望や第3志望の合格も怪しくなります。
時間は待ってはくれず、流れていき、刻々と入試本番の日が近づいていきます。
『逃げても時の流れは待ってくれず運命の日がやってくる』という状況なのですから、自分の理想的な未来を努力次第で掴み取るチャンスを自分から放り投げていることを意味しています。
それを子どもの頃からしていて、結局最後まで逃げ回って失敗する人は、大人になっても逃げてしまう癖がついてしまう恐れがあります。
子ども時代の失敗を反省して心を入れ替える人もいますが、現実逃避してしまう子が心を改めるというのは相当な出来事が起きない限り難しいです。
子どもが大人になってからのことを考慮して、子ども時代から現実を受け止めずに逃亡してしまう性格を直していく必要があります。
まず、逃げてばかりだとどういう未来が待ち受けているか親子で紙に箇条書きでもいいので書き出してみましょう。
『志望校に入れない』『やりたい職種に就けない』『仕事で必要な検定試験に合格しない』
このような内容を書くと思いますが、決して好ましい言葉ではありません。
子どもが自分の未来にどのようなことが起きるか分かれば、『このままではいけない』と少しは思うようになります。
そして、そういう未来がやって来ないようにすればよいのか、今から出来ることも一緒に親子で考えて書き出して、現実を受け止める機会を設けてください。
2.理想が高すぎると現実逃避する可能性が高くなる
現実逃避する子の特徴の一つとしてあげられるのが、『理想が高すぎる』というものがあります。
自分の今の力と理想がけた外れに離れていて、それを思うとどうしても努力する気持ちが湧いてこない、というケースです。
塾で働いている時も、程度の差はあるにしろ、理想と現実のギャップのある子がいました。
そのギャップが広がっていなければ努力をして差を縮めることができるので、現実逃避をする必要はありません。
しかし、あまりにもかけ離れているとコツコツと努力をしていても入試本番までに間に合わず、『もういいや』と投げやりになる子もいました。
例えば、お医者さんになりたいと言っている生徒がいるとします。
その地域の高校で将来的に医師になれる進学ルートに乗るにはトップ高校に入るのが絶対条件だけれど、合格する偏差値とその生徒のテストの偏差値の差は25程度ある。
その生徒は今中学3年になったばかりで、これからその差を埋めるには勉強を邪魔するようなもの、今でいえばスマホを処分してテレビや漫画もほとんど見ずに一生懸命勉強する努力をして、それでも叶うのかどうか、というほどの話になります。
ちょっと極端な例ですが、そのくらい軽々と自分の今の力を真正面から受け止めずに高い理想を掲げる子がいます。
入試が近づいてくると『このままでは合格できない』と気がつくので、自暴自棄になって一気に勉強しなくなります。
勉強しない理由を聞くと『今さら努力しても間に合わない』と応えて、まるで他人事のようなことを口にする子もいます。
目標とすることのハードルが高い方が意欲を増す子もいますが、あまりにもギャップがありすぎると、その差を埋めるまでの地道な努力を継続する気持ちが低下してしまうこともあります。
また、ほら吹きというのは言い過ぎかもしれませんが、自分の実力とはかなり違うことを目標にする気持ちがデカすぎる子もいます。
小さい頃は『またあんなこと言って』と笑い話で済ませられますが、さすがに中学生になり高校受験が迫ってくる中で理想と現実のギャップを受け止められないというのは進路進学で苦労することが目に見えています。
子どもの理想が高すぎる時は、リアルな学力を踏まえて『どのくらの勉強をしないと間に合わないか』や『努力を続けられると約束できるか』と子どもの軽はずみな言動を叱るのではなく、言ったからには実行に移すことを最初は求めてみて下さい。
おそらく、最終的には子どもは音を上げるので、その時になったら現実的な目標を考えさせるようにしましょう。
3.人生に失敗はつきものと親の失敗談を話す
現実逃避する子の中には、失敗を恐れている子もいます。
失敗することが怖い。
失敗した時に周囲から何と言われるか分からない。
完璧を求めてしまい、それが無理そうだと感じると現実を見ないで逃げてしまう。
これは子どもだけでなく大人でも起きる心の反応と言えるでしょう。
なかなか失敗を恐れないようにするには時間がかかることもあります。
また、親が子どもに完璧を求めていると受験で失敗することが許されないと感じ取り、恐ろしさのあまりに現実逃避をすることもあります。
親の方も完璧を求めていないけれど、子どもが一人で『自分は失敗しない』と自分の気持ちを背負ってしまっている時は親の子どもの頃の失敗談を面白おかしく話してみてください。
誰にでも一つや二つくらいは失敗談があるはずです。
私の場合、小学生時代は失敗の連続なので色々と子ども達に話をしてきました。
子ども達は『努力しないとお母さんみたいな点数を取るけどまだ自分は努力している方』と失敗することの恐怖心よりも努力の大切さを感じ取るような子に育っているので、自分の失敗談が無駄ではない、活かされたようで嬉しい気持ちになります。
子どもにとって親の存在は身近なものですが、一番そばにいる大人であり家庭内のルールのような大きな存在です。
そういう親が自分と同じ年頃にやってしまった失敗エピソードを聞くというのは親への親近感が増すだけでなく、『親も子ども時代があったのか』『失敗から立ち上がる強さがある』『どのように失敗から立ち直ったのか』と色々と考えるようになります。
こうした話をしていると現実逃避をすることがバカらしくなって、また努力の大切さや現実的な目標を立てる子に育ちやすくなるので、おすすめです。
まとめ
受験というのは子どもの人生においてハラハラドキドキ、不安と期待が入り混じった大イベントです。
練習を重ねて本番を迎える部活動の大会と同じように、日頃どれだけ勉強してきたか、そして入試当日にどれだけ点数が取れるかで合否が決まるという非常にシビアで現実的なものです。
逃げ出したいという気持ちは親、大人でも理解できます。
しかし、こうしたシビアな世界が待ち受けている中で、いつまでたっても現実から目を背けるというのは子どものこれからの人生を考えるとプラスに働くことはないでしょう。
入試までの時間というのは限られているので、『どうやって現実逃避を辞めさせるか』『理想が高すぎる性格をなおす』ということに力を注いで、現実を真正面から受け止めて受験に立ち向かう子になるようにしたいですね。