今回は【計算ミスより怖い【式が立てられない病】 小4から始まる思考の格差】と題し、お話をしていきます。
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算数の学習で、もっとも見落とされがちな落とし穴があります。
それが【計算ができれば大丈夫】という計算至上主義です。
計算ドリルを速く正確にこなせる子ほど、周囲からは【算数が得意】と評価されがちです。
しかし、小学4年頃から顕在化するのが、計算はできるのに文章題になると手が止まる現象です。
これは計算ミスよりも、はるかに深刻な問題です。
文章題で必要なのは、計算力そのものではありません。
問題文に書かれた状況を理解し、【何をどう数式で表すか】を考える力、つまり式を立てる力です。
この力が育っていないと、どれだけ計算が正確でも前に進めません。
これがいわば【式が立てられない病】です。
恐ろしいのは、この差が小4あたりから静かに広がり始めることです。
計算中心の学習で成果を出してきた子ほど、【考えなくても解けていた成功体験】に縛られ、文章を読み、状況を整理し、式を組み立てる訓練を十分に積めていないケースがあります。
その結果、応用問題や中学以降の数学で一気に伸び悩みます。
そこで今回は、なぜ計算が得意な子ほど文章題で止まりやすいのか、文章を算数の言葉に翻訳するための具体的なステップ、そして親が今すぐできるサポートについて整理します。
計算力は武器になります。
しかし、勝敗を分けるのは【式を立てられるかどうか】です。
その現実に、早い段階で気づくことが、思考の格差を広げないための第一歩になります。
なぜ【計算が得意な子】ほど文章題で止まるのか?
まず、計算が得意なことは、本来大きな強みです。
しかし算数の学習では、その強みが思わぬ落とし穴になることがあります。
とくに小学校中学年以降、計算スピードや正確さで評価されてきた子ほど、文章題に直面した瞬間に手が止まるケースが目立ちます。
これは能力不足ではなく、学習の方向性によって生まれる構造的な問題です。
計算中心の学習では、【見たことのある形に当てはめる】経験が積み重なります。
問題文を丁寧に読み取る前に、数字だけを拾い上げ、反射的に計算を始める癖がついてしまうのです。
この癖は、条件が単純なうちは通用しますが、状況を整理しなければ解けない文章題では通用しません。
さらに厄介なのは、計算が得意なほど失敗経験が少ないことです。
つまずかずに進んできた結果、【考えなくても解ける】成功体験が積み重なり、じっくり考える耐性が育ちにくくなります。
そのため、文章題で迷った瞬間に思考が止まり、【分からない】という感覚に強いストレスを感じてしまいます。
ここでは、計算力があるにもかかわらず文章題で止まる理由を掘り下げます。
数字だけを追う学習の弊害、イメージが追いつかなくなる壁、言葉の理解を軽視するリスクを整理することで、【式が立てられない病】の正体を明らかにしていきます。
①数字だけを見て【適当に計算】していないか
文章題でつまずく子に多く見られるのが、問題文を読まずに数字だけを拾い、適当に計算してしまう癖です。
これは【計算が得意な子】ほど陥りやすい罠でもあります。
過去の経験から、数字が並んでいれば何かしら計算すれば答えが出る、という感覚が染みついているためです。
この状態では、問題文は意味を理解するための情報ではなく、数字を探すための素材になってしまいます。
誰が何をしているのか、どの数量がどう変化しているのかを整理する前に、足し算か引き算か、掛け算かを当てにいく。
その結果、条件を見落としたり、関係のない数字同士を結びつけたりします。
怖いのは、このやり方でも簡単な問題は正解してしまうことです。
たまたま数字の組み合わせが合っていると、【分かっているつもり】になってしまいます。
しかし、少し条件が複雑になると一気に破綻します。
これは計算力の問題ではなく、状況を把握せずに式を作ろうとする姿勢の問題です。
親ができる対策は、【何を求めている問題?】と問いかけることです。
式を書く前に、問題のゴールを言葉で説明させます。
数字に飛びつく癖を止め、状況全体を見る習慣をつけることで、適当な計算から脱却できます。
式を立てる力は、数字よりも先に【意味】を捉えるところから育ちます。
②【頭の中のイメージ】が追いつかない壁
文章題で式が立てられない原因の一つに、問題文を読んでも頭の中に状況が浮かばない、という壁があります。
計算が得意な子ほど、数字処理には慣れていても、場面を想像する訓練を十分にしていないことがあります。
その結果、文章を読んでも意味がつながらず、どこから手をつけてよいか分からなくなります。
文章題は、目に見えない状況を言葉だけで説明しています。
そのため、登場人物、物の移動、数量の増減などを頭の中で再現できなければ、式に落とし込むことはできません。
イメージが追いつかない状態では、計算以前に【何が起きているのか】が分からないのです。
この壁にぶつかった子は、【読んだけど分からない】【何算か分からない】と感じます。
しかし本当の問題は、計算方法を知らないことではなく、状況を描けていないことです。
イメージがないまま式を作ろうとすると、数字を無理やり組み合わせるしかなくなります。
対策として有効なのは、文章を読みながら【どんな場面?】と問いかけることです。
図を描いたり、言葉で説明させたりするだけで、思考は大きく変わります。
頭の中にイメージを作る習慣が身につけば、式は自然と後から生まれます。
式が立てられない壁の正体は、計算力不足ではなく、イメージ不足なのです。
③言葉の意味を【暗記】で済ませるリスク
文章題で式が立てられない背景には、言葉の意味を深く理解しないまま暗記で処理している問題があります。
【合わせては足し算】【残りは引き算】といった対応関係を覚えること自体は便利ですが、それだけに頼る学習には大きなリスクがあります。
言葉と計算を機械的に結びつけると、少し表現が変わっただけで対応できなくなります。
算数の文章題に使われる言葉は、文脈によって意味が微妙に変わります。
【増えた】と書かれていても、全体が増える場合もあれば、一部が移動しているだけのこともあります。
暗記に頼っていると、こうした違いを見抜けず、誤った式を立ててしまいます。
さらに問題なのは、言葉の理解が浅いと、文章全体の流れを追えなくなることです。
一つ一つの語句を点で覚えているだけでは、状況を線としてつなげられません。
その結果、式を立てる以前に論理が途中で切れてしまいます。
親ができるのは、【この言葉はどういう意味?】と問い返すことです。
別の言い方に置き換えたり、日常の場面に当てはめたりするだけで、理解は一気に深まります。
言葉を暗記で済ませず、意味として捉える習慣が、式を立てる力の土台になります。
計算力よりも先に育てるべきなのは、言葉を理解する力なのです。
文章を【算数の言葉】に書き換える3つのステップ
さて、文章題が解けない原因を【センス】や【ひらめき】の問題にしてしまうと、対策は見えません。
しかし実際には、文章題は特別な才能がなくても解けるようになります。
鍵になるのは、文章をそのまま理解しようとするのではなく、【算数の言葉】に翻訳するという発想です。
問題文は、日本語で書かれています。
しかし、解答に必要なのは国語的な感想ではなく、数量の関係を表す数式です。
この二つの間をつなぐ作業ができていないと、どれだけ計算力があっても式は立てられません。
翻訳がうまくいかない状態が、いわゆる【式が立てられない病】です。
重要なのは、いきなり式を作ろうとしないことです。
文章題に強い子は、まず状況を整理し、言葉で理解し、見える形に落とし込んでから数式を考えます。
この順序を意識的に身につけることで、誰でも文章題への苦手意識を減らすことができます。
ここでは、文章を算数の言葉に書き換えるための具体的な3つのステップを紹介します。
自分の言葉であらすじを語ること、絵で見える化すること、そして式の理由を説明することです。
この翻訳作業を習慣化できれば、文章題は【運任せの問題】から【再現性のある問題】に変わります。
①まずは自分の言葉で【あらすじ】を語らせる
文章題に取り組むとき、いきなり式を書かせていないでしょうか。
しかし、式が立てられない子にとって最大の壁は、状況を理解しきれていないことです。
そこで取り組みたいのが、問題文を読んだあとに【何が起きている問題か】を自分の言葉で語らせることです。
あらすじを語る行為は、文章をそのままなぞることではありません。
登場人物や物、数量の変化を整理し、重要な情報だけを抜き出す作業です。
この過程を通して、子どもは問題文を受動的に読む状態から、能動的に理解する状態へと切り替わります。
うまく話せなくても問題ありません。
途中で言葉に詰まるのは、理解が曖昧な部分が表に出ている証拠です。
親は正解を教えるのではなく、【それはどういうこと?】と促すだけで十分です。
説明しようとする中で、子ども自身が情報の不足や矛盾に気づきます。
このステップを飛ばすと、文章題は常に運任せになります。
あらすじを語れるようになると、何を求めているのか、どの情報が必要なのかが自然と整理されます。
式はその後についてくるものです。
自分の言葉で語る習慣こそが、文章を算数の言葉へ翻訳する最初の一歩になります。
②悩んだら【絵】を描いて見える化する
文章題で思考が止まったとき、最も効果的な打開策が【絵を描く】ことです。
頭の中だけで状況を整理しようとすると、情報が絡まり、何が分かっていて何が分からないのか見えなくなります。
絵にすることで、文章は一気に整理可能な情報へと変わります。
ここでいう絵は、上手なイラストではありません。
人や物を丸や四角で表し、数量や関係を線や矢印で示す程度で十分です。
重要なのは、問題文に書かれている情報を外に出すことです。
描くことで、【ここは分かっている】【ここがまだ曖昧】という境界がはっきりします。
絵を描く習慣がない子は、式が立てられないときほど数字を眺めて固まってしまいます。
しかし、絵を描くと、計算以前に状況が整理され、次に何を考えるべきかが見えてきます。
式が浮かばないのは能力不足ではなく、情報が頭の中で渋滞しているだけなのです。
親は【絵を描いてみようか】と促すだけで十分です。
正しいかどうかを評価する必要はありません。
描いた絵をもとに会話をすることで、思考は自然と前に進みます。
見える化は、文章を算数の言葉へ翻訳するための、極めて強力な補助線になります。
③【なぜその式にしたの?】と理由を聞く
文章題で式が書けたとき、多くの家庭では【合っているかどうか】だけを確認しがちです。
しかし、本当に大切なのは、なぜその式になったのかを説明できるかどうかです。
この確認を怠ると、式を立てる力は定着しません。
式の理由を言葉で説明させることで、文章と数式が正しくつながっているかが分かります。
もし説明ができない場合、その式は偶然当たっただけか、過去のパターンを当てはめただけの可能性が高いです。
正解していても、理解していなければ再現性はありません。
【なぜ?】と聞くと、子どもが黙ってしまうことがあります。
しかしそれは失敗ではなく、理解が曖昧な部分が表に出ているだけです。
親は正解を教えるのではなく、【問題文のどこを使った?】とヒントを出す程度で十分です。
考え直す時間が、翻訳力を鍛えます。
この習慣が身につくと、子どもは式を作る前に理由を意識するようになります。
文章を読み、状況を整理し、式に落とすまでの流れが一本につながります。
理由を語れる式だけが、本当に使える式です。
答えの正解よりも、式の根拠を問う姿勢が、思考の格差を埋めていきます。
【早く解きなさい】を封印して地頭を育てる
ところで、文章題で式が立てられるかどうかは、子どもの才能だけで決まるものではありません。
実は、その差を大きく左右するのが、家庭での親の関わり方です。
とくに【早く解きなさい】【まだ終わらないの?】といった何気ない声かけは、思考力の成長に大きな影響を与えます。
式を立てるためには、文章を読み、状況を整理し、試行錯誤を重ねる時間が必要です。
しかし、時間を急かされる環境では、子どもは考えることよりも、早く答えを出すことを優先するようになります。
その結果、式を立てる前に数字を組み合わせる癖が強まり、思考は浅くなります。
もちろん、親に悪気はありません。
正しく導いてあげたい、効率よく進ませたいという思いが、つい言葉に出てしまうのです。
しかし、文章題に必要なのは効率ではなく、粘り強く考える姿勢です。
考える時間を奪ってしまうと、地頭を育てるチャンスも同時に失われてしまいます。
ここでは、【早く解きなさい】を封印することの意味と、親ができる具体的なサポートを紹介します。
①子どもの【じっと考える沈黙】を待つ
文章題で式を立てられる子とそうでない子の差は、考える時間を与えられているかどうかに大きく左右されます。
多くの親は、子どもが黙っていると【まだやっていないのか】と焦って声をかけてしまいます。
しかし、この沈黙こそが、思考の最前線で脳が試行錯誤している仕組みなのです。
子どもが手を止め、じっと問題を見つめている時間は、文章を読み取り、状況を整理し、式を組み立てる準備をしている瞬間です。
ここで口を出してしまうと、子どもの頭の中での整理が中断され、安易に丸暗記やパターン頼みの解法に逃げてしまいます。
結果として、式を自力で作る力は育ちません。
親に求められるのは、ただ待つことです。
【分からないのか】と評価したり、正解を教えたりせず、子どもが自分のペースで思考を回せる環境を整えます。
最初はじっとしているだけに見えるかもしれませんが、この時間が地頭を鍛える最も重要なトレーニングです。
沈黙の価値を理解すれば、親は焦らず見守ることができます。
子どもが自分で考え、式を立てられたとき、その達成感は計算の正確さ以上に深い学習効果を生みます。
待つことこそ、思考力の根幹を支える親の最大のサポートなのです。
②答えの正解より【考え方のプロセス】を褒める
文章題で式を立てられる力を伸ばすためには、結果だけに注目せず、考え方のプロセスを評価する習慣が欠かせません。
多くの親は、つい答えが合っているかどうかばかりを気にしてしまいます。
しかし、答えが正しくても、過程が理解できていなければ、再び同じ問題に出会ったときに解ける保証はありません。
親は子どもが式を立てる過程や、文章を整理する手順、数字や関係性を見つけ出す思考の流れに注目することが重要です。
【ここまでよく整理できたね】【どの情報を使ったか分かりやすいね】といった声かけは、子どもにとって大きな励みになります。
正解に至るまでの試行錯誤そのものが学びの本質だからです。
過程を褒めると、子どもは失敗を恐れず挑戦する姿勢を身につけます。
間違えたときも【なぜそうなったか】を一緒に考えることで、思考力はさらに強化されます。
逆に正解だけを評価すると、子どもは安全策に走り、文章題の本質的な理解が育たなくなります。
答えよりプロセスに目を向ける習慣は、家庭でしか育てられません。
親がプロセスの価値を認め、日常的に声かけすることで、子どもは自分で考え、式を立てる力を着実に伸ばしていくことができます。
③失敗しても【怒られない】安心感を作る
文章題に取り組むとき、子どもはどうしても間違えることがあります。
しかし、間違いを責められる環境では、考えること自体にブレーキがかかってしまいます。
式が立てられない子の多くは、正解を出すことを優先しすぎて、自分で考える試行錯誤を避けてしまうのです。
親ができる最も大切なサポートは、失敗しても怒られない安心感を作ることです。
【間違えても大丈夫】【一緒に考えよう】と声をかけるだけで、子どもは思考を止めずに挑戦し続けられます。
安心感があるからこそ、じっくりと文章を読み、情報を整理し、式を組み立てる時間を確保できるのです。
また、失敗を叱るのではなく、何が原因でつまずいたのかを一緒に確認する姿勢も重要です。
【ここが分かりにくかったね】【次はこう考えるといいかも】といったフィードバックは、ミスを学びに変える手助けになります。
これにより、子どもは間違いを恐れず、自分で考える力を伸ばしていきます。
家庭で安心して試行錯誤できる環境を整えることは、計算力だけでなく文章題に必要な論理的思考力や問題解決力の基盤を育てることにつながります。
親の見守りと肯定が、式を立てられる子を育てる鍵になるのです。
式を立てられる子が勝つ世界
文章題で式を立てられる力は、計算力だけでは育ちません。
まず、数字やパターンだけで解こうとする習慣は、思考力を奪い、文章題で立ち止まる原因になります。
計算ドリルはあくまで【筋トレ】であり、試合である文章題には通用しないのです。
次に、文章を算数の言葉に翻訳する力が必要です。
あらすじを自分の言葉で語り、絵や図で見える化し、【なぜその式にしたのか】を説明できるようになることが、式を立てる力の核心です。
そして、家庭での親の関わりも大きな要素です。
問題を解いている時の沈黙を待ち、正解よりも思考のプロセスを褒め、失敗しても安心できる環境を整えることで、子どもは自ら考える力を育てていきます。
計算だけをこなすだけでは身につかない、文章理解・思考・自己判断の習慣を、この三つの軸で補うことが、式が立てられる子を育てる近道です。

















